【寄稿】
第5回欧州「医療の質の改善」フォーラム
(5th European Forum on Quality Improvement in Health Care)に参加して
朝日大学 小浦 孝三
オランダ、アムステルダムのライ(RAI)国際会議場で行われた、表記ののフォーラムは当日参加を除き、41カ国827名。(参加者:英国(182)、オランダ(173)、スェーデン(107)、ノルウェー(83)、デンマーク(36)、スイス(36)、アメリカ(34))日本からは、上原鳴夫(東北大学大学院)、武澤
純(名古屋大学医学部)、
長谷川 友紀(東邦大学医学部)、大道 久(日本大学医学部)、小浦 孝三(朝日大学経営学部)の5名であった。
フォーラムは全体会議、発表ならびにポスターセッション107件、展示場などで構成されており、上原、武澤、
長谷川、小浦は「医療のTQM推進協議会メンバー」として行動を共にした。私は主として@EBM(Evidence-based
Medicine:科学的根拠に基づく医療)とコクラン・ライブラリー、A医療の質改善事例、BEFQM(European Foundation
for Quality Management:ヨーロッパ品質経営財団)のモデルの医療管理への活用の3つの点に注目して調査した。
(1)EBMとコクランライブラリー:Stephan Rogers他
EBMは治療に対してコクランライブラリーが活用され、CD−ROMや本など出版物も多く、BMJグルー
プやZynx Health社が活躍している。
(2)医療の質の改善事例
@患者の安全向上とエラーの低減:Brent C.James他
A業務プロセス再設計法(Business Process Redesign:BPR)法を用いた病院内の診断及び治療の総時間の
低減:Ruud J W Beijers他
Bリーダーシップ、体質変革、マネジメントの変革:Wendy Cowie他
C医療における統計的工程管理の適用:諸工程管理図の理解と活用:James Bennenyan他
などが注目された。
(3)EFQMモデルの医療管理への活用
EFQMモデルは欧州品質賞の審査基準のフレームワークのことである。
@医療において卓越するための戦略:ドイツにおけるEFQMモデルの実施:Anja Meier他
A医療機関におけるEFQMモデルの活用:Teun Hardjono他 などが有益であった。
(4)全体セッション:全体セッションは3つあった。
3月23日 フォーラムの紹介とフレームワーク−患者のために熱意を持って進むパイオニア Wim Schel
lekens.オランダの医療の実状。CBOの歴史を説明され、QI(Quality Improvement)とTQM(Total
Quality agement)の重要性、考え方の説明があった。
3月24日 21世紀の医療のビジョン:Donald M. Berwick.
IHIが開発した診療事務業務の理想的設計法Idealized Design of Clinical Office
Practices(IDCOP)の紹介とその考え方を説明した。
3月25日 第5回ヨーロッパフォーラムの概観:Donald M. Berwick.から
@われわれの努力の結合 A現状打破の結果の獲得 Bわれわれが知り得たことの実行
C普及と協調 D学び、教え、訓練する
「不良品質は患者に提供する必要はない。品質は継続的改善と協働の新しい方法を学ぶことである。さあやろう!!」と全体のサマリーがあった。
総合所見 @フォーラムにおける発表、ポスターセッションの事例は、今後の“医療の質向上(TQM)”の研究に非常に有益であった。
AHI、CBOのトップの方々の交流と全体セッションにおける講演は欧州のみならず米国における
医療の質向上活動の活発さと問題点を勉強するのに役立った。
BEFQMモデルのセルフアセスメントへの活用が普及していることは重要であると思った。米国で
はマルコムボルドリッジ国家品質賞に医療部門が出来、昨年から審査がはじまっている。おそらく
来年は受賞機関が出るであろう。
以上の考察からわが国の医療へのTQMの導入普及の必要性を痛切に感じている次第です。 |